契約書は婚姻届
腰を浮かせかけた尚恭が座り直す。
急に真剣な顔になった尚恭に、少しだけ不安を覚えた。

「それは大変喜んでいただけたようで、嬉しいです」

ニヤリ、唇を歪めて挑発的に笑う尚一郎に、はぁーっと尚恭が大きなため息を落とした。

「おまえはいいかもしれないが、会社としては困るんだ。
わかっているんだろう?」

「……わかっていますよ、そんなこと」

またふて腐れたかのようにふいっと視線を逸らした尚一郎に、今度はなにも云えなかった。



尚恭たちが去ったあと、ひとりで待っているという朋香に尚一郎が反対した。

「朋香分が不足しているって云っただろう?
まだ補充できてない」

「……なんですか、朋香分って」

尚一郎は離す気がないのか、膝の上に朋香を抱えたまま、犬飼やほかの社員に指示を出している。
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