契約書は婚姻届
みんなくすくす笑っているものだから、前が見れなくて必然、尚一郎に抱きついて背中に顔を隠すことになった。
おかげで、ますますくすくすと笑われて、恥ずかしくてしかない。


「さて。
一段落したから今日は帰ろう」

「え?
もう帰るんですか?」

時計はまだ午後四時。
いくらなんでも早い気がする。

「Mein Schatzはそろそろおねむの時間だろう?」

「まだ眠くないです!」

ちゅっ、あやすように口付けしてくる尚一郎に腹が立つ。
日本時間ではすでに真夜中だし、長旅の疲れもあってさっきからうとうととはしていた。
気遣ってくれたのは嬉しいが、子供扱いされるのはムカつく。

「無理しなくていいよ。
それに、ここのところみんなにはほぼ不眠不休で働いてもらっていたからね。
たまには休んでもらわないと」
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