契約書は婚姻届
広い浴槽で手足を伸ばして旅の疲れを落としてあがると、尚一郎の姿を探す。

「尚一郎さん……?」

リビングに行くとタブレットを手に握ったまま、ソファーに座った尚一郎は眠っていた。

「やっぱり、お疲れなんだ……」

ソファーの前にしゃがんみ膝の上に両手で頬杖を突いて見上げると、うつらうつらとしている尚一郎が見えた。

ずり落ちた眼鏡。
乱れた髪。

なんだかそれだけで、どきどきしてくる。

気持ちよさそうに眠っている尚一郎に、起こすべきか悩んだ。
それに、このままずっと、見ていたい気さえする。

「ん……」

「危ない!」

身動ぎした尚一郎の身体がソファーの背からずれ、落ちそうになって慌てて支える。
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