契約書は婚姻届
「僕たちにも予定があるんですよ」

「いいじゃない、二十年ぶりくらいの再会なんだから。
少しくらい付き合いなさいよ。
……朋香、飲み物はいかが?」

「いただきます」

備え付けの冷蔵庫からスパークリングワインを出すと、カーテはグラスに注いで渡してくれた。
受け取りながらさっき、カーテの言葉が引っかかっていた。
聞き間違いでなければ、二十年ぶりと云っていたような。

「尚一郎さん、いま……」

「……僕はね、十五のときに日本に渡ってから、一度もドイツに帰ってないんだよ」

困ったように笑う尚一郎に、先ほどからの違和感の正体がわかった気がする。

久しぶりの親子の対面とはいえ、酷くぎこちないように思えていた。

二十年も会っていなければ、それはそうだろう。

「尚恭はヨーロッパ出張の度に寄ってくれるのに、尚一郎は一度も寄ってくれないのよ。
こんな薄情な息子に育てた覚えはないんだけど」
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