契約書は婚姻届
「……母さん」

決まり悪そうに笑う尚一郎はどうも、カーテには勝てないらしい。


その後もカーテは幼い頃の尚一郎の話など語り続けた。

朋香の目から見て完璧で怖いものなどないような尚一郎だが、小さい頃はお化けが怖く、夜のトイレは必ず付いてきてもらっていたなど、新鮮で仕方ない。

気付けば車は、田舎町に入っていた。

「……ライン川下りでもしようっていうんですか」

尚一郎の視線が冷たい。
そういえばずいぶん長いこと、車に乗っていた気がする。

「それもいいけど、今日はいいわ。
それよりおなかぺこぺこ!
お昼にしましょう」

……はぁーっ。

にっこりと笑うカーテに、尚一郎の口から大きなため息が落ちた。
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