契約書は婚姻届
ホテルに着くと支配人に出迎えられた。
どうも、カーテが経営するホテルらしい。

食事はドイツ料理だったが、家でも時々出ていただけにかえって懐かしい感じがした。

「今日はここに泊まってちょうだい。
明日の予定はちゃんと立ててあるから」

ナプキンで口元を拭い、さもそれが当然とでもいうように笑うカーテを、じろりと尚一郎が睨む。

「用がすんだのならおいとましますよ。
僕たちはホテルを取ってありますので」

「心配しなくていいわ。
尚恭に頼んで全部、キャンセルしてもらったから」

「Was!?(なんだって!?)」

わずかに腰を浮かせた尚一郎だったが、あたまを抱えて座り直した。

「……だから母さんに関わるのは嫌なんだ」

……尚一郎が二十年、カーテに会わなかった理由が見えた気がした。
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