契約書は婚姻届
ただ恨んでいるだけなら、カーテに送られた車などとうに処分してしまっていただろう。

けれどあの少し年式の古いポルシェは、新車のようにぴかぴかに磨いてあった。

尚一郎の気持ちはわからないがきっと、恨みだけではないはずだ。

「ありがとう、朋香。
それが聞けただけで十分よ」

嬉しそうに笑うカーテに、胸が熱くなる。
なんだか自分まで泣きそうになって誤魔化すようにカップを口に運んだ……瞬間。

「母さん!
朋香を勝手に引っ張り回さないでくれますか!?」

「えっ」

後ろから抱きつかれ、落としそうになったカップを慌てて掴み直す。

「どうやって出てきたの?
あのソファーが動くはずないんだけど」

首を傾げるカーテに、朋香も同時に首を傾げる。
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