契約書は婚姻届
はぁーっ、深いため息を落とすと、尚一郎は朋香を膝の上に抱き上げた。

ぎゅっと抱き締められるとやはり、複雑な心境なのだと気が付いた。
抱き付いている尚一郎はまるで、縋るようだったから。

「二十年も会わなきゃ、そりゃどうしていいのかわからないよ。
でもこれは、僕が悪いんだよね」

「……」

「押部の家のことを聞いていても、僕はいまいち理解してなかったんだ。
日本に来て現実を突きつけられて、こんなところに送り出した母さんを恨みもしたよ」

朋香に抱き付く尚一郎の手に力が入って、胸がずきんと痛んだ。

「でも一番腹が立ったのは、そんな日本に行く僕にあの人、『頑張って会社経営してみなさい?
きっと、尚恭にも私の足下にもおよばないでしょうけどね』
って高笑いしたんだよ!」

「あー……」
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