契約書は婚姻届
突然ドレスに着替えさせられたものの、説明はいまだに一切ない。

「だって尚一郎、甲斐性なしだから式を挙げてないらしいじゃない?
確かに、結婚式は必ず挙げなきゃいけないものじゃないけど、花嫁は女の子の憧れよ」

「うっ」

尚一郎は言葉を詰まらせると、ばつが悪そうに視線を泳がせた。

そういえば式はふたりで挙げようとは云ってくれたが、それっきりになっている。
いろいろなことがありすぎて、すっかり忘れていた。

「だから、尚恭と計画したの。
ちなみに、知らないのはあなたたちだけよ。
侑岐も、尚一郎の秘書の犬飼も協力してくれたわ」

「だからか……」

がっくりとうなだれる尚一郎のだからは、なにがだからなのかわからないが、侑岐については心当たりがあった。

一緒にエステに行った日、妙にボディチェックをされたのだ。
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