契約書は婚姻届
真剣に自分を諭す少女に驚いた。
日本に来てから尚一郎の立場に遠慮して、こんな風に叱ってくれる人はいなかった。

……万理奈と崇之をのぞいて。

「うん。
怒鳴ったりしてごめん。
僕も悪かったよ」

今度は尚一郎が素直に謝ると、少年が決まり悪そうに笑った。

「じゃあ、喧嘩両成敗ってことで。
……あ、スーツ、汚れちゃったんですね。
弁償とか……」

尚一郎の汚れたスーツに気付いたのか、少女の顔が曇っていく。

「請求しないよ。
喧嘩両成敗なんだろ。
……君、これからはちゃんと前を見ろよ。
僕も気を付けるから」

「はい!」

笑顔で手を振って去っていく少年を、少女ふたりで手を振り返して見送る。
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