契約書は婚姻届
見えなくなると、コンビニのトイレに引っ張って行かれた。

「早くしないとしみになっちゃうから」

手洗い場でハンカチを濡らすと、汚れたスーツを拭いてくれる。
なんだかそれがくすぐったく、まともに顔が見れない。

「いいよ、帰ったらすぐクリーニングに出すし、落ちなければ捨てるだけだから」

「捨てる!?
もったいない!」

とんとんと手際よくスーツを叩く少女の手つきは手慣れているようで、家庭的に感じさせた。

汚れが落ちなくてもかまわないと思っていたがなんとなく少女と離れがたく、しばらくされるがままになっていたけれど、ピピピッ、ピピピッとどこからともなく鳴った音に、少女の手が止まる。

「あっ、タイムセールの時間!」

「タイムセール?」

訝しがる尚一郎を無視して、少女がハンカチを押しつける
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