契約書は婚姻届
「は、離して!」

「えー、嫌だよ」

なんとか引きはがしたものの、不満顔で見られた。
いつも通りに戻った尚一郎にほっとしたものの、はぁっ、小さくため息が漏れる。
けれどそんな朋香に尚一郎は気付く様子がない。

「CEOは年が年だし、もともと血圧が高いからね。
なのにあんなに興奮するから」

自分の祖父に対してと思えない言葉にじろりと睨むと、びくっと尚一郎は怯えたように背中を揺らした。

「ま、まあ、二、三日は寝込むだろうけど。
大したことないよ」

「……お見舞い。
行かなくていいんですか」

「僕が行ったらまた興奮してしまうだろう?
それに、呼び出されない限り、あそこに僕は入れないからね」

「それってどういう……」

しっ、尚一郎の長い人差し指が、朋香の言葉を遮るように唇にふれる。
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