契約書は婚姻届
そっと視線を上げてみると、困ったように笑っていた。

「このまま少し遠出して、今日はどこかに泊まろうか。
温泉、とかどうだろう?」

「尚一郎さん?」

「朋香には嫌な思いをさせてしまったからね。
お詫びだよ」

ちゅっ、唇に落ちたキス。
いい子、とあたまを撫でられると、いまはなにも云えなかった。

 
高橋に高速に乗るように指示を出すと、尚一郎はどこかに電話をかけはじめた。
話してる感じからきっと、相手は秘書の犬飼だろう。
車はすぐにサービスエリアに停まった。

「ん?
どうかしたかい?」

先に降りた尚一郎が、一瞬降りるのを躊躇した朋香に不思議そうな顔をした。

「あの、尚一郎さんがこういう所を利用するなんて、意外だなって」
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