契約書は婚姻届
飲み物とベーカリーでサンドイッチを買ってくれた。
予定外の遠出なのでなにも準備してなかったということと。

「結局、お昼はまともに食べられなかったからね。
お腹が空いただろ?」

「えっ、いや、」

……ぐぅーっ、返事をするかのように朋香のお腹が鳴って、顔から火が出る思いがした。

 
戻ると、高橋はなにも聞かずに車を出した。
すでに、犬飼と行き先の打ち合わせをしているらしい。
サービスエリアに寄ったのは、その目的もあったようだ。

あーんと尚一郎から差し出されるサンドイッチを拒否したのもの、認めてもらえず仕方なく囓り付く。
さっきから尚一郎は無理にはしゃいでいるように見えた。

 
有名温泉地の街を抜け、車は山の中に入っていく。
細い道がくねくねと曲がりくねった先、そこには翠に沈む、旅館が建っていた。

「今日、泊まるのはここ」

車は正面玄関ではなく、裏に回っていく。
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