契約書は婚姻届
停まったのは小さな平屋の、建物の前。

「離れ、貸し切りにしてもらったから。
シーズンオフでよかったよ」

にっこりと笑った尚一郎に軽く目眩がした。

 
先に風呂に入ってくるといいよ、と云われたものの。

「お風呂は部屋にも付いてるし、大浴場を貸し切ってもいいけど、どうする?」

「……部屋のお風呂で十分です」

「そう?」

まず、離れを貸し切りっていうのが理解できない。
隣接して建っている離れ四棟、それを全部貸し切りにしたのだというが、……そんな必要、あるんだろうか。

さらには本館の大浴場貸し切りとか。
尚一郎の常識と自分の常識が違いすぎて困る。

「じゃあ、一緒に……」

「入りませんから!」
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