大剣のエーテル
私は、「まぁ、こんなことをアンタに言っても仕方がないけどな。」と自嘲気味に呟いた彼に、何となく同情心が芽生えた。
そして、ある提案が頭に浮かぶ。
「あの…」
「ん…?」
私は、琥珀の瞳をこちらに向けた彼に、思い切って尋ねた。
「良かったら、私の家に来ますか…?」
「!」
その瞬間、2人の間の空気が変わる。
彼は一瞬、希望の光が見えたような表情を浮かべたが、すぐに殺し屋のような強面に戻ると私に答えた。
「願ってもみない話だが…遠慮する。あんた、そういう提案は軽々しくするもんじゃないぞ。俺だったから良かったものの、下心のある男に引っかかったら、善意も何もないだろう。」
「…そういうものなんですか…?」
「恐ろしく無防備だな、あんた…」
あまりにも長い間、ダーナさん以外の人と普通の会話をしてこなかったせいで、私は少しズレているらしい。
世間しらず、とでもいうべきなのだろうか。
まるで天然記念物でも見るような視線を送る彼に、私は続けた。
「いつもは、他人を家に誘うような事を自分から言ったりはしないのですが…今日は久しぶりに人と会話をしたので、浮かれてしまっているんだと思います。」
「…ほぉ…。」
目を細める彼の横にしゃがみ込んだ私は、彼の心情を伺いながら言った。
「すごく古くて狭い家ですし、大してもてなしは出来ないですけど、野宿をするよりはマシだと思います。お金をもらったりもしません。…良かったら、私に外の世界の旅の話を聞かせてもらえませんか?お連れの方も一緒に。」