大剣のエーテル
私は思わず立ち上がり、引き寄せられるように露店へと駆け寄った。
お客さんが割と少ないその露店のワゴンには、本が山積みになっている。
(す、素敵…!掘り出し物が見つかる予感…!)
私は、エーテルたちの忠告を忘れて本を次々と手に取った。
(…これも、これも読んだことがない…。
…わ!これ、面白そう…!)
頭に浮かぶのは、翡翠の瞳の彼だ。
今だけは、いつもランバートがふらりと寄り道をしてしまう気持ちがよくわかる。
ワゴンに集められた本は、どれもこれも興味を惹かれる本ばかりだ。
きっと、ランバートがここにいたら、一緒にはしゃいでいたに違いない。
私が分厚い歴史小説を手に取り、綴られた文字を読み始めた
その時だった。
「おじょーちゃん。本、好きなのか?」
(…え…?)
ふいに、色気のある低い声が聞こえた。
顔を上げると、背の高い青年が私を覗き込んでいる。
はっ、とするほど綺麗な薔薇色の瞳。
ぱっちり二重の猫目はまつ毛が長く、整っている顔立ちによく映える。
髪の毛は、瞳より少しダークがかったワインレッドだ。
(…誰…?)