大剣のエーテル

私は思わず立ち上がり、引き寄せられるように露店へと駆け寄った。

お客さんが割と少ないその露店のワゴンには、本が山積みになっている。


(す、素敵…!掘り出し物が見つかる予感…!)


私は、エーテルたちの忠告を忘れて本を次々と手に取った。


(…これも、これも読んだことがない…。
…わ!これ、面白そう…!)


頭に浮かぶのは、翡翠の瞳の彼だ。

今だけは、いつもランバートがふらりと寄り道をしてしまう気持ちがよくわかる。

ワゴンに集められた本は、どれもこれも興味を惹かれる本ばかりだ。

きっと、ランバートがここにいたら、一緒にはしゃいでいたに違いない。

私が分厚い歴史小説を手に取り、綴られた文字を読み始めた

その時だった。


「おじょーちゃん。本、好きなのか?」


(…え…?)


ふいに、色気のある低い声が聞こえた。

顔を上げると、背の高い青年が私を覗き込んでいる。

はっ、とするほど綺麗な薔薇色の瞳。

ぱっちり二重の猫目はまつ毛が長く、整っている顔立ちによく映える。

髪の毛は、瞳より少しダークがかったワインレッドだ。


(…誰…?)


< 129 / 369 >

この作品をシェア

pagetop