大剣のエーテル

その時、ふいにランバートと目があった。

私の不安を察したのか、ランバートはにこりと微笑む。


「ノアちゃん、そんな心配そうな顔しないでよ。大丈夫。俺はエーテルの団長なんだから。…信じて待っててね。」


「えっ?!」


その言葉に、私はつい声を上げる。


「“待ってて”…?私は一緒に行けないの?」


「うん。ノアちゃんはここでお留守番。危険には晒せないからね。」


“当然でしょ”と言わんばかりのトーンにショックを受けたが、彼の言葉はすとん、と胸の中に落ちた。

冷静に考えてみれば、私には戦う力も傷を治す力もない。

エーテル達についていったところで、何も出来ない足手まといになることは確実だ。

ここまで一緒に旅をして来て仲間になったつもりでいたが、私はここからどういっても一般人であり、彼らとの境界線を超えることはない。

ババ様が眉を寄せて口を開く。


「ランバート。あんた、さらっと“ここでお留守番”と言ったが、私にノアの面倒を見ろということか?」


「そういえば、ババ様に先に頼むのを忘れてました。あはは、ダメですかね?」


いかにも確信犯の笑みに、ババ様は、はぁ、とため息をついて言う。


「まぁ、今さら子どもが1人増えたところで問題ないが…」


「ありがとうございます!」


にこりと笑うランバート。

もともと私を置いていくために、この町に寄ったのだろう。


(…ランバートの中では、もう一派を倒すまでのシナリオが出来ているのかもしれない。)


そんなことを考えていた

次の瞬間だった。


ぴくん!


ランバートが、はっ、と翡翠の瞳を見開いた。

素早く背中に背負う剣の柄に手が伸びる。


「ランバート…?」


そっ、と彼の名を口にしたその時、イヴァンさんがぼそり、と呟く。


「…カイ…」


(!!)


はっ!とした。

ランバートが追い続けている“彼”がこの近くに現れたらしい。

エーテル達の纏う空気が一気に変わり、子どもたちも何かを察したのか辺りを不安そうに見回している。


…トンッ!


私は、迷わずランバートの背中を押した。


「行って!」


「!」

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