大剣のエーテル
ランバートは一瞬真剣な顔を見せたが、すぐに穏やかな表情になり私を見つめた。
何かを思いついたような彼は、いたずらを企む子どものような表情を浮かべる。
その時、彼の口から飛び出したのは、私の予想だにしなかった発言だった。
「ノアちゃん。この町を出たいって、町長さんに言ってみなよ。」
「えっ?!」
つい、自分でも驚くほどの大声が出た。
“町を出る”…?
「いきなり、何を言い出すの…!世話をしてもらっている身分で、そんなこと言えるわけないよ。」
「ノアちゃんは、この町を出たいと思ったことはないの?」
ランバートの言葉に、「考えたこともなかった」と答えると、彼は私の顔を覗き込んで畳み掛けるように言った。
「じゃあ、ずっとこの町で暮らしたいと思ってるの?」
「…っ、それ…は…」
全てを見透かすような翡翠の瞳に、心が揺れた。
この町を出ようなんて考えたことはない。
でも、ずっとここで暮らしたいかと尋ねられたら、素直に頷けない自分がいる。
本当は、もう分かっているんだ。
自分が、これからどうしたいか。
「よし!決まり!いこう、ノアちゃん。」
「っ、ど、どこへ?」
「決まってるでしょ?町長さんの家!」