大剣のエーテル

その時、再び大男の野太い声が町に響いた。


「今夜の宿はこの町に決めた!さぁ、俺を存分にもてなせ!良い働きをした奴は王に進言してやる!

…楯つく奴はいないだろうな?俺の気分を害した者は、それなりの罰を覚悟しろ!」


高々と宣言した大男に、町民達は目の色を変えた。

商人たちは、大男を店に引き入れようとあの手この手で売り込みをし、女達は急に馴れ馴れしく媚を売り始める。

色めき立つ町民達の中には、禁忌を犯すことを許されたエーテルの“それなりの罰”を恐れ、笑顔が引きつっている者もいた。


(エーテルは“正義の味方”だって噂だけど、何だかイメージと違うな。思ったよりも、偉そうで乱暴な人みたい…。)


ふとそんな考えが頭をよぎったが、エーテルがこの町に来たって、私には関係のないことだ。

逆に、変な騒ぎに巻き込まれないうちにこの場から去った方がいい。

外部から来た者に、私のような魔力を持たない存在がいることを知られてはいけないのだから。


私は、大男に気を取られている様子の町民達の間をすり抜け、町の郊外へと向かったのだった。

< 7 / 369 >

この作品をシェア

pagetop