大剣のエーテル

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やがて、賑やかな大通りを抜け、裏道に入る。

一気に人通りがなくなり、そこはしぃん、と静まり返っていた。

立ち並ぶ家々によって太陽の光が遮られたレンガの道は、まるで異世界のようだ。


(ここまで来れば、家まではあと少し。町の人たちにも会わなくて済むな。)


近所の町民達は皆、先ほどの大男につられて家を空けているようだ。路地に現れる影もない。

私は、ふぅ、と小さく呼吸をし、歩くペースを少し落とした。


(…よかった。この調子だと、このまま何事もなく平和な誕生日が送れそう。)


そんなことを思って薄暗い路地を曲がった

次の瞬間だった。


「ひっ!!」


突然、1人の男性の姿が私の目に飛び込んできた。

路地裏の闇に溶け込むほどの真っ黒なスーツを着こなし、レンガの壁にもたれかかるようにして座り込んでいる。

かるくウェーブのかかった漆黒の髪を片側だけ耳にかけ、俯いているため顔は見えない。


(な、何この人!こんな所に座り込んで…まさか、死んでるの…?!)

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