大剣のエーテル
私は、目の前の光景に一瞬息が止まった。
もちろん、死体と間違えられてもおかしくないような格好で路地裏に座り込む男性に驚いた、というのもあるが、彼を見て飛びのいた理由はそれだけではない。
その男の隣には、不審なほど膨れ上がった“大荷物”があった。
鞄にリュックにスーツケース。
それと、荷物の中でも何やら、やけに場所を取っている異様な風呂敷包み。
(これ、全部この人の荷物なの…?スーツを着ている人を町で見かけたことはないし…訳ありでここに流れ着いた旅行者なのかな…?)
その時、ふっ、と男性が顔を上げた。
ギラリ、とした獣のような琥珀色の瞳が私をとらえる。
「 …っ!」
ぞくり、と背筋が震えた。
彼の鋭い視線に射抜かれた瞬間、体が金縛りにあったかのように動かせなくなる。
彼はそのまま顔を動かさず、上目遣いで警戒するように私を睨んだ。
(…っ、怖い……!)
無言の圧力から、本能的に危険を察知した。
この男は、普通じゃない。
軽蔑の視線を向ける町民よりも、よっぽどタチの悪い極悪人のようなオーラを放っている。
ごくり、と喉が鳴った。
(に、逃げた方がいいよね…、お金なんて持ってないし、脅されでもしたら…)
思わず後ずさりをしたその時。
殺し屋のような男は、私の予想をはるかに超える言葉を口にした。
「…あぁ、道を塞いで悪いな。気にせず俺を跨いで通ってくれ。…退いてやりたいが、今は立ち上がる気力がねぇんだ。」
「え……?」