大剣のエーテル

ランバートは、苦笑しながら口を開く。


「いやー、ごめんね。もちろん俺は犯人じゃないし、恐らく一派の仕業なんだろうけど…まぁ、こんな遠くの町まで来ることもそうないし、給料の出る小旅行とでも思えば…」


「心底、迷惑。」


ばっさりとランバートの発言を一刀両断したルタさんは、むすっ、としながらカルテをぱん、と閉じた。

その様子にやれやれ、と目を細めるイヴァンさんに、私はこそっと尋ねる。


「あの、どうして人斬りの犯人が一派だと分かったの?」


すると、イヴァンさんは「あぁ…」と呟き、スーツの胸ポケットから何かを取り出して私に見せながら言った。


「事件現場に“幻夢石のかけら”が落ちていたんだ。幻夢石は国で発掘と所持が禁じられていてな。一派以外の善良な国民は幻夢石の存在すら知らない。」


(つまり、幻夢石が現場にあった以上、犯人は一派しかありえないってこと?…というより、そもそも幻夢石って?)


私は、何の意識もせずイヴァンさんの手の中に黒く輝く幻夢石に手を伸ばす。

と、次の瞬間だった。


「ダメだよ、ノアちゃん。」


ぱしっ、とランバートに腕を掴まれた。

驚いて彼を見上げると、ランバートはさっきまでとは別人の真剣な顔をして言葉を続ける。


「下手に触れると、心を乗っ取られる。」

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