この愛、スイーツ以上
「冷蔵庫開けたらケーキの他にサンドイッチがあった。俺のために持ってきてくれたんだろ? 食べなくてごめん。あとで食べるからおいといて」

「あ、いえ、お気になさらないでください。私が勝手に作ってきただけなので」

「食べたいからおいといて。じゃ、打ち合わせ行ってくるからよろしく」


「はい」と返すと副社長は微笑んで、私の頭をポンと軽く叩いた。

エレベーターを使わず、階段で下りていく姿を見送っていると後ろから、肩を叩かれる。振り向くと奥山さんが怪しげに笑っている。


「見たわよ。副社長の笑う顔、初めて見たけど、それよりも!」

「えっ、なんですか?」


人差し指をビシッと立てて、キリッとした顔をするから何事かとたじろぐ。


「頭ポンって、なによ? 副社長とどんな関係になってるの? 説明しなさいよ」

「いえ、説明することは何もないです。すみません、私すぐに戻らないといけないので」


副社長室から逃げてきたのに今度は総務部から逃げた。

それにしても、頭ポンをしたときの彼の笑顔は魅力的で落ちるところだった。

赤くなった頬を冷たい手で隠しながら、副社長室へ戻った。
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