この愛、スイーツ以上
そこから出てきた紺色のワンピースに白いエプロンを身につけた40代後半くらいの女性が、車のドアを開ける。


「吉川さま、いらっしゃいませ」

「え、あ、えっと、こんにちは。ありがとうございます」


副社長のお母さんへの挨拶の言葉は考えていたが、ここでの言葉は考えていなく、どう返すのが良いのか分からなかった。

戸惑いながら返した言葉は簡単なもので、この先大丈夫かと不安になる。予想していないことが起きた時に対処出来る自信が全くない。

副社長は「気軽においで」と言ったけど、心はすでに重い。足取りも重くて、降りてからのそのそと進む私を出迎えてくれた女性が優しく微笑んでくれた。


「私はこちらで主に奥さまの身の回りをお手伝いさせていただいている高橋と申します。奥さまは大変お優しい方なので、ご心配なさらずお入りください」

「はい、ありがとうございます！」


キャリーバッグを持つ手に力を入れ、足を進ませて家の中に入る。

足を踏み入れた途端、何かが勢いよく突進してきた。一瞬怯んでしまったが、それは紫乃ちゃんで私はしゃがんだ。
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