この愛、スイーツ以上
安田さんは、多分副社長に恋しそうになっている私に気付いている。だから、遠回しに恋をするなと言ってくれている。

きっと副社長に近付かないようにと言ったのもそういう意味が込められていたに違いない。

だけど、シンデレラになるのは無理だと言われている感じもしてなんだか落ち込む。

夢見てはいけない。シンデレラにはなれない。

副社長に私はふさわしくない。


「吉川さん? どうした? どこか具合でも悪い? 泣きそうな顔してるけど」

「あ、いえ。あ、そうなんです。実はトイレに行きたくなっていて。すみません、失礼します!」


どんどん下降していくテンションに耐えられなくなり、心配する副社長の顔をちゃんと見ないでトイレへ逃げた。

美味しいシュークリームを食べて幸せな気分になっていたのに。

トイレから出た私は副社長室に戻らず、総務部へ行った。今は顔を合わせたくなかった。

私の勤務場所はあそこなのだから、戻らないといけないのは分かっているけど、気持ちを切り替える時間が今は必要。


「あれ? 吉川さん、どうしたの?」

「大平さん、お疲れ様です」
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