この愛、スイーツ以上
総務部へ向かう廊下をとぼとぼ歩いていると、後ろから声を掛けられた。振り向くと、その人物はファイルを抱えた大平さんだった。

相変わらず爽やかな雰囲気を纏う大平さんを見て、心が落ち着いてくる。胸を高鳴らせる人ではなく、心に落ち着きをくれる人を好きになったほうがいいのかな。

副社長と一緒にいても落ち着く時はある。犬と一緒にいる時やスイーツを食べている時。

明日のパーティーで私の心はどう動くだろうか。

行きたくなくなってくる。


「なにかミスでもした? 業務で辛いことでもあった? 俺でよければ何でも聞くよ」


顔を俯かせる私に大平さんが優しく訊いてくれる。相談できるならと思うが、相談できることではない。

副社長を好きにならないようにするにはどうしたらいいのですか?

なんて、訊けない。

でも、優しくしてくれる大平さんに何か答えたほうがいいと顔を上げた。

するとその時、横から出てきた手に腕を掴まれる。


「えっ?」

「あ、副社長。お疲れ様です」

「何してるの?」

「え、あの……」


何してる?

何してた?
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