この愛、スイーツ以上
突然のことに頭が真っ白になり、返事に詰まると痺れを切らしたのか不機嫌な顔した副社長の掴む手に力が加わる。


「トイレに行って戻ってこないと、心配するだろ」

「ごめんなさい」


副社長の方に体を引っ張られた私は謝った。

「行くよ」と手を繋がれると「待ってください」の声が掛かる。

止めたのは大平さんで、彼は繋がれた手を見てから、空いている方の手を掴んだ。私は二人の間に挟まれてしまう。


「何?」

「吉川さんに用事があるんです。確認したいことがあって、俺が呼びました」

「そうなの?」

「そうですよ。ね?」


二人の間で、二人に問いかけられた。頭の中はどうしよう!どうしよう!が繰り返されている。

だけど、ここで違うと言ったら大平さんが悪者になってしまう。私をかばってくれているのに。

優しい大平さんを悪者には出来ない。


「そうなんです。大平さんに呼ばれていたのをトイレの中で思い出して、急いできました。すみません、一言も言わずに来てしまって」

「そうならいい。じゃ、俺は先に戻るから」
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