この愛、スイーツ以上
「由梨ー、どこ行ったの? 出てきなさいよ」

「吉川さんはそちらの方に行かれましたよ」


私の動きは井村さんにしっかりと見られていたらしい。


「そっち?」と言いながら近付く足音は副社長のもので、私はこれ以上隠れるところはないかとテーブルや椅子の他に道具が保管されている部屋を見回した。


「由梨、開けるよ」

「ああ! は、はい!」


隠れられなかった私は観念して返事をする。ドアが開かれて、副社長が顔を出した。

私を上から下まで眺める彼に対して、私も同じように改めて彼の髪型から靴まで眺めた。

副社長はブラックフォーマルなスリーピーススーツに私のドレスと同じボルドー色のネクタイとチーフを身に付けていた。

お互いの視線が上から下までいき、再度上に戻って視線が交わる。


「由梨、よく似合っている。きれいだよ」


「きれい」という言葉に魔法をかけられてしまったのか、私も素直な気持ちを伝える。


「副社長こそとてもかっこいいです。本当に王子様みたい」

「俺が王子様なら由梨はお姫様だね。由梨姫、行こう」
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