この愛、スイーツ以上
「由梨、とてもきれいだから堂々としていてね」

「きれいですか?」

「うん、きれいだよ」


副社長からの「きれい」は魔法の言葉だ。私に自信と勇気を与えてくれる。

私は自分から副社長の腕に手を添えた。寄り添う私を彼はチラッと横目で見て、満足そうに微笑む。

今日は彼の隣に相応しい女性として振る舞うよう頑張ろう。何かあっても副社長がいれば大丈夫。

安田さんもいるし、真由美さんもいる。あと虎太さんも出席すると聞いている。知らない人ばかりでは心細いけど、知っている人もいるから大丈夫。

自分に暗示をかけるよう『大丈夫、私はきれい』と心の中で唱えた。



「東郷副社長、ご無沙汰してます。そちらの女性の方はどなたでしょうか?」


会場に入った途端、一人の男性がこちらに来た。やっぱり長身の副社長はここでも目立っていて、足を踏み入れるなりあちらこちらから視線が集まっていた。


「うちの会社に勤めている吉川さんです」

「はじめまして」


副社長の紹介は私はお辞儀だけをした。余計なことは言わなくていいはず。

挨拶程度の会話だけで他の人へと移っていったので、胸を撫で下ろしたが、息をついている暇はなかった、
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