この愛、スイーツ以上
姉は簡単に髪をまとめあげて、上に持っていく。惚れ直すと言われてもピンとこないなと思いつつ、副社長の反応を予想してみる。

「かわいい」と言ってくれるとは思うけど、出来ることなら「きれい」と言われたい。


「きれいに見える?」

「そうね。この辺りでまとめたら大人っぽくて良い感じになると思うわよ」

「なるほど。じゃ、その辺でお願い」


姉はまとめあげていた位置を下げて鏡越しで話す。


「由梨の髪をまとめるのは久しぶりね」

「そうだね。昔は毎日お姉ちゃんにやってもらっていたものね」


ある出来事から姉は私の髪をいつも整えてくれた。姉は私の髪をいじるのが楽しくなり、美容師になる決意をした。

だけど、進学校に通っていたのに美容師になる道を選んで本当によかったのかな。他にやりたいことがあったんじゃないかなと心の隅でいつも思っていた。

いつか聞いてみたいと思っていたけど、ずっと聞きそびれていた。

大学進学のためにレベルの高い高校に進んだのに、専門学校に行くと言い出して両親や先生は驚いていた。もちろん私も。
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