この愛、スイーツ以上
先に走る副社長に続いて、私も走った。大粒の飴は容赦なく私たちを濡らした。

たかが10分、されど10分……あっという間にびしょ濡れだ。


「副社長、拭いてください」


水も滴るいい男……と見惚れている暇はない。バッグからハンドタオルを出して、副社長に渡す。

風邪を引いたら大変だ。


「ありがとう。でも、由梨が先に拭いて」

「いえ、私よりも副社長の方が濡れてますよ」


ジャケットを借りたおかげで頭から肩はそれほど濡れていなかった。副社長の髪からは水が垂れている。

渡したタオルで私を拭こうとするから、それを取り上げて副社長の頭を拭く。早く拭かないと。


「なんかいいね。由梨に拭いてもらうなんて楽しい」

「えっ? あ、すみません! 痛くないですか?」


ポタポタと垂れるから、ついごしごしと強めに拭いてしまっていた。

だけど、楽しい?


「痛くはないよ。ありがとう。由梨が拭いてくれるなら雨が降ったときに傘をさすのはやめようかな」

「バカなことを言わないでください。毎回濡れたら風邪引きますよ」

「あー、それは困るな。会社休んだら、安田さんに嫌みを言われそうだしね」
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