この愛、スイーツ以上
ふとお互いの立場を思いだし、私は話を止めた。そんな私を副社長は不思議そうに見る。


「どうしたの? もっと聞かせてよ。由梨の話、楽しいから」

「でも、業務時間外といっても、私はただの社員で副社長に対して、こんな気さくに話をするのはよくないですよね。すみません!」


私が謝ると副社長は表情を曇らせた。


「謝らなくていい。今は仕事とは関係のないプライベートな時間だ。だから、副社長だということは忘れて。副社長と呼ばなくてもいいから」

「え? でも……」

「俺の名前、知ってる?」

「はい、東郷涼太さんです。でも、無理です!名前でなんか呼べませんよ」


この話の流れだと名前で呼べと言われると想定できてしまい、彼が言うよりも先に断った。

案の定、副社長は不機嫌な声で「何で?」と問う。プライベートだというのはもちろん分かるけど、副社長という事実を忘れて接することは出来ない。無理だ。


「だって、あなたは副社長だから」


一瞬返す言葉に詰まった彼は顎に手を当てて、芝生に視線を緒とした。
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