この愛、スイーツ以上
無愛想な副社長の口から「かわいい」が何度も聞けるのは貴重なんだろうけど、こうも真っ直ぐ言われると恥ずかしい。

どう答えていいか分からなくて、目を泳がせてしまう。

「かわいい」と言う時の彼の瞳は優しくて、愛しいものを見つめるような表情だから余計に。

エサをもらうように「かわいい」の言葉をもらうたびに戸惑う。

私の動揺に気付かない副社長は二匹に目を向けていた。二匹を楽しそうに見ている。


「紫乃とコロもかわいいな。由梨と同じで美味しそうに食べてるよ」


えっ……私は二匹と同じ?

副社長の目に映る私は紫乃ちゃんとコロと同じなのか……。

私は犬ではなくて人間だと反論したくなるが、上司に反論は出来ない。

でも、これだけは言わせてもらいたい。


「副社長はご自分のことを一人の男として見て欲しいと言いましたが、私のことも一人の女として見てくださいね」

「由梨のことは最初から一人の女として見てるよ」

「本当でしょうか? 紫乃ちゃんに似ているというので、もしかしたら犬として見ているのかと……」
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