この愛、スイーツ以上
突然言われた『かわいい』に私は目をしばたかせた。

無愛想だといわれる副社長が『かわいい』と言って、口元を緩ませるなんて驚きだ。

今まで副社長とは話をするどころか遠くからしか姿を見たことしかなかった、笑った顔は一度も見たことがない。

私だけではなく他の社員も見たことがなく、「新副社長は無愛想だ」と誰しもが話していた。

前副社長は今の副社長のお兄さんだったが、一年前に別の会社を起業するからと退職した。そのため、その時に商品開発部の東郷課長が副社長に昇任となった。

前副社長はとてもフレンドリーな人で社員一人一人に愛想よく話し掛ける人だったから、どうしても無愛想な副社長は比べられてしまっている。

兄弟でもこんなにも性格が違うものだろうかと思うが、私も姉とは全然性格が違うのでこういうものなのかなとも思う。

いつまでも私と話をしている暇のない二人は慌ただしく下の会議室に向かっていった。

一人残された私は副社長の意外な笑顔にいつまでもボーッとしていてはいけないと我に返り、安田さんに教えてもらった場所から掃除機を持ってくる。
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