この愛、スイーツ以上
何を言っているのか分からなくて首を傾げた。私は一応人間なので尻尾はないはず。


「副社長、社長とのお約束の時間になりますよ」

「ああ、そうだった。君、あとでゆっくり話そう。お疲れさま、気を付けて帰って」


副社長は手を振って、オフィスに入っていった。

あの副社長が手を振った……私は信じられない思いで姿が見えなくなるまでそこに立ち尽くしてしまった。

クールだと思っていた副社長のイメージが崩れそうになる。笑ったり、手を振ったりとするなんて。

もっと関わったらもっと人間味のある副社長が見れるのかもしれない。でも、関わる機会はもうないかな。



「何でこんなとこを切ったの?」

「聞いてよ、お姉ちゃん」


ここは姉の麻里(まり)が夫の透(とおる)さんと経営している美容院。私は髪の毛を切るまでの過程を事細かに説明した。

私の話を姉に大きな口を開けて笑う。


「うけるわね。でもくせ毛だけど、絡まるるほどの髪質じゃないわよ。朝、ちゃんととかしたの?」

「それがとかす時間もなくて……」
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