俺の花嫁~セレブ社長と愛され結婚!?~
「っ……!?」

彼の胸に手をついて顔を上げると、眼鏡の奥の綺麗な瞳と真っ直ぐ向かい合ってしまい、うしろに大河がいることも忘れてドキドキしてしまった。

「大丈夫ですか」

「は、はい……」

「立てますか」

「はい……」

篠原さんは私の体を支える手をそっと離すと、私の代わりにデスクへ向かい、鳴り続けている電話を取った。

転んでしまった恥ずかしさに、男性に抱きとめられるというアクシデントが加わって、私の頬は火を吹いたように赤くなる。
わけもなく前髪を整えたりなんかして、動揺をごまかした。

はっと視線に気づいて振り返れば、大河の激しく不愉快そうな顔。

弁解しようか――あわあわと口を開こうとしたとき。

「会長秘書から至急資料を取りに来てほしいと言われました。少々席を外してもよろしいでしょうか」

電話を終えた篠原さんが、大河に指示を仰ぐ。

「いってこい」

大河の命を受けて、篠原さんは足早に社長室を出ていった。
そのうしろ姿を見送り扉が閉まったところで、大河が「おい」と低い声で唸った。

振り返り見れば、大河の顔はもはやこの大企業に君臨する冷酷無比な指導者ではなく、私のよく知るいつもの彼だった。
ただし、その顔は怒っているときものだ。
< 114 / 173 >

この作品をシェア

pagetop