俺の花嫁~セレブ社長と愛され結婚!?~
つい。
心の中にもとより巣食っていた悪魔の誘いにあっさりと乗せられ。
そのふんわりとした唇に、自分のものをそっと重ねた。

柔らかくて、ほんのりと甘い香り。
目を瞑って酔いしれながら、このまま襲いかかりたい衝動を必死で抑える。

そっと唇を離し目を開き、あどけない寝顔を確認したあと、再び物理的な距離を置いた。

情けないことに、今さら心臓がバクバクと鼓動を刻み始めて、これ以上彼女に目を向けていられなくなり、窓の外に視線を逃がしながらそっと口もとを押さえた。

悪い。たぶん、お前のファーストキス、奪ったわ。


目が覚めたあと、もしもこのことを白状したら、彼女は怒るだろうか――怒るだろう。間違いなく。
それどころか、卑怯な男というレッテルを張られるかもしれない。下手すると、もう二度と口を利いてもらえなくなるかも……告白して振られるより、ずっと気まずくて惨めだ。

……ノーカンにするか。

なにごともなかったかのように彼女を起こし、真っ白なプリントを突きつけてからかってやった。
むすぅとむくれる可愛らしい顔が見れたから、これはこれで収穫があった。
その唇を奪ったことは――自己満足にしておく。

けれど、この日。
彼女のバッグの中にある赤い包みが姿を現すことはなく、俺はなんのプレゼントももらえぬまま誕生日を終えた。
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