俺の花嫁~セレブ社長と愛され結婚!?~
お昼のチャイムが鳴ると、各役職者に着いて散り散りになっていた秘書たちが一斉に戻ってきて、秘書課は賑やかさのピークを迎えた。

先輩方に自己紹介を済ませると、何人かは一緒に昼食を取らないかと誘ってくれたのだが、篠原さんを待っているからと断った。
昼休みが十五分過ぎた頃に、どうやら取締役会もひと段落ついたようで、篠原さんが戻ってきた。

「午後も立て続けに会議に出席しなければなりません。初日からたいして指導もできずすみませんが、定時まで自席にて待機後、帰宅してください」

それだけ告げて、篠原さんはその場を去ろうとする。

「あの、すみません!」

私は慌てて彼を呼び止め、パソコン画面を指さした。そこには私が作った調査資料が画面いっぱいに表示されている。

「勝手なこととは思ったのですが、先ほど話に上がった第一総和物産との提携に関する資料を作っています。まだ完成とはいえないのですが、もう少し時間をいただければ仕上がりますので……もしよければ使っていただけないでしょうか」

私の言葉に、篠原さんが眼鏡の奥の瞳にぎゅっと力を込める。

「驚きました」

「え?」

「やるなと言われたことをやるとは思っていなかったので」

「……勝手に、すみません」

「褒めているんですよ」

「え……?」

ポカンとする私をしり目に、篠原さんは腰を屈め、画面と眼鏡との距離を縮めた。
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