紳士的上司は愛を紡ぐ
「……り、麻里っ!」
はっと顔を上げると、そこには原稿を抱えた涼子の姿があった。
「大丈夫?ぼーっとして。
今から本番だって言うのに。」
今日はついに『EVE FES』の放送日。
あと15分で生放送が始まる。
こんな調子じゃいけない。冷静さを取り戻し、原稿を持ち直す。
「うん、緊張してただけ。私以上に多忙なのに、心配かけてごめん。涼子こそ大丈夫?」
彼女は、元々バラエティに強い。共演者からの人気も高く、私よりさらに2本程の特番を抱えていた。
「余裕!一緒にやってやるわよ、今日は。」
スタジオに入っていく彼女の背中が眩しい。
私は密かに微笑み、その後を追った。