紳士的上司は愛を紡ぐ
ただ、顔を見てしまえば思い出すのは、
───"大切な人"もいて欲しいなと。
そう言った、あの日の放送で。
「……っ、お疲れ様です。」
湧き上がる暗い感情を押し殺すように、私は仕事を言い訳に素早く彼の横を通り過ぎた。
「二宮アナ。」
呼び止められた瞬間、びくっ肩が揺れる。
「…………年末、体調には気をつけて。
お疲れ様です。」
こちらの想いなんて、一ミリたりとも気付いていないのであろうその優しさが、嬉しくも残酷だった。
普段通り穏やかに響く低音に、
彼のその優しさに、勘違いしそうになる。