紳士的上司は愛を紡ぐ

「八王子、二宮はいるか〜?」

遠藤プロデューサーが顔を覗かせた。
慌てて背筋を伸ばして起き上がる。

「お疲れの所、悪い。『8+2=』の年明け一発目の収録予定なんだが、今時間ある?」

「お疲れ様です、大丈夫です!」

「んじゃ、すぐそこのミーティングルームで。八王子は……また居ないみたいだから、伝言よろしく。」

「分かりました、すぐ行きます。」

『EVE FES』で疲れているのは遠藤さんも同じだ。年末特番で抱える原稿の山から、スケジュール帳を引っ張り出し、廊下に出て彼の後を追う。

今日は、この後は一旦帰宅して、明日は……。

回らない頭で、明日以降のスケジュールを確認していると、

「おぉ!お疲れ!」

と前を歩く遠藤さんが嬉々として声を上げた。
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