紳士的上司は愛を紡ぐ
その向こうにいたのは、
「お疲れ様です。……二宮アナも。」
先程お世話になったヒーローだった。
「さっきはありがとな。
八王子、今、いけるか?
『8+2=』の年明けの予定で…」
ミーティングルームのドア開けながら、遠藤さんが尋ねる。
「勿論ですよ。参加します。」
と快諾した彼は、そのまま開いたドアを手で押さえ、私を中へと通してくれた。
こんなに忙しい時でさえ、紳士的な姿勢は崩れないらしい。
少人数用の小さなミーティングルームで、遠藤さんに向かって二人で腰かける。
二週間ぶりに彼が隣にいるというだけで、私の心は充足感を得てしまっていた。
「……で、この予定でいこう。二人とも今日はお疲れさん、来年も宜しく!」
遠藤さんは確認が終わると、まだ番組を何本も抱えているのであろう、「戸締りと空調は頼んだぞ〜」と言い残して、風のように去っていってしまった。