ハニートラップにご用心
「嘘はついてないわよ」
メインテーマ曲と一緒に流れるエンドロールを尻目に、私は涙目で口をぱくぱくさせた。
「さ、もう夜も遅いし寝ましょ。明日もお仕事頑張りましょうね」
そう言われ、壁に掛けられた木製のフレームで装飾されたアンティーク調の時計を見れば時刻は22時だった。
さすが女子力の高い土田さんだ。シンデレラタイムは逃さないというわけか。
「そうですね、魔法が解ける前に寝ましょう」
「千春ちゃん、たまに訳のわからないこと言うわよね。面白いから良いけど」
立ち上がってキッチンにマグカップを下げに行く土田さんの後ろを着いて歩く。流しにマグカップを置いて、予告無く振り向いた土田さんの胸に鼻をぶつける形になった。
まさか私が真後ろに立っているとは思わなかったらしく、土田さんは少しだけ動揺したように目を見開いて、痛みに震える私の肩に手を置いた。
「あの、土田さん」
「うん?」
ぶつけた鼻を押さえながら、私は土田さんを見上げた。
「一緒に寝てくれませんか……?」
微笑んだまま、ピシリと石のように固まった土田さん。妙な空気になってしまったことをほどなくして察した私は、慌てて手を横に振って弁解の言葉を探した。