ハニートラップにご用心
「わ、私……ホラー番組見たあと一人で寝れなくて」
先ほど視聴した番組の余韻が抜けず、恐怖で足がすくむ。しどろもどろに言葉を紡いでいると、土田さんが額に手を当てて本気?とか大丈夫じゃないわよ、などと何やら独り言を発し始めたので、私はビクビクしながら彼を見上げる。
こんなことなら最初から怖いものなんか見なきゃいいのに、人間の心理とは不思議なもので挑戦する前に謎の自信に満ち溢れるもの。実家を出てから一緒にホラー鑑賞をできるような人がいなかったため、しばらくそういったものから離れていたから余計にだった。
土田さんの独り言がピタリと止んだかと思えば、深いため息が聞こえてきた。
「……良いわよ。アタシの部屋でいい?」
「え?でも、さっき部屋に入っちゃダメって」
最初の方に言われた言葉を思い出して目を丸くする。
「じゃあ、一人で寝るのね」
「え、い……いや!是非、是非土田さんのお部屋で!」
どんな心境の変化があったのかはわからないが、部屋に入ってはいけないという制約を発信した本人は何事もないように私から離れて自室に向かって歩き出す。
私は置いていかれるまいと慌てて後ろを追いかけた。