ハニートラップにご用心


「電気、消すわよ」


扉も窓も閉め切った部屋の中で土田さんの声が響いて、それに反応するよりも先に部屋の明かりを落とされた。

急に暗くなったことに驚いて布団に顔を埋めれば、小さく笑い声が聞こえた。たぶん、土田さんは私のことをからかって弄ぶのが楽しくて仕方ないんだろう。

少しだけむっとするけど、すぐに背中に感じた冷気に気を取られてそんなことなど忘れてしまう。

私が壁際の方にいるため、少しだけ背中が寒い。布団を引っ張るのも失礼かなと思って密着しない程度に土田さんの方に寄ると、土田さんがいきなりこちらを向いた。


「……あのさぁ」

「は、はいっ!」


いつものハスキーな高めの声ではなく、歳と見た目相応の低い美声が発せられて、思わず身を固くした。


「俺が男だってこと、忘れんなよ」


音もなくベッドが沈んで、私は状況が理解できず何度か瞬きを繰り返した。

ようやく暗闇に慣れてきた視界に映ったのは、怒ったような表情をした土田さん。眉間に深く刻まれたしわ。今まで見てきた冗談混じりの怒り顔ではなく、本気で怒っているようだった。


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