ハニートラップにご用心

「俺を試すようなことばっかして、何がしたいわけ?」


土田さんの大きな手がTシャツの下から進入してきて、優しく腹部を撫でた。


「こういうこと期待してた?」

「つ、土田さん……?」


いつもと雰囲気も口調も行動も、何もかもが私は知らない。"土田恭也の姿形をした誰か"がそこにはいた。

長い指先が際どい部分をくすぐるように撫でるから、私は驚いて悲鳴を上げる。

男の人にこんなふうに触られた経験がないから、どうしたらいいかわからない。泣きそうになって震えていると、土田さんは小さく舌打ちをして私の肌に触れていた手を離した。


「今日みたいな無防備なことばっかしてたら、本気でヤるから」

「……………………………は、はい」


消え入りそうな掠れた声で返事をすれば、土田さんはいつものように柔和な笑みを浮かべて、私の前髪をくしゃりと掻き上げるようにして額を撫でた。


「わかればいいのよ」


何事も無かったかのようにおやすみ、と言って背中を向けられた。

思考が身体の反応に追いついておらず、顔は熱いし脈動もやけに速い。うるさい心臓を押さえつけるように土田さんと反対になる壁の方を向いて、胎児のように背中を丸めた。

――当然、寝れるわけがなかった。


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