ハニートラップにご用心
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私の働く会社はIT系に分類される。
アプリケーション開発からインフラソリューションなどの一般的に想像されるIT企業の仕事から、電子機器の製造から販売まで幅広く取り扱っている。
土田さんの所属は後者にあたり、製造と販売の橋渡し役となっている。それが商社マン。私はそのサポートや事務作業が主な仕事だ。
新商品のプロジェクトも大詰め。あとはうちの商品を置いてくれる取引先の企業に向けた納品書を作成すれば、とりあえず一息つけるといったところまで来ていた。
取引先から届いた発注書をまとめたファイルを手にして、おおよその枚数を見てどのくらいで仕上がるか頭の中で計算をする。
今回の製品は特に企画開発部が力を入れて推してきたので、営業の方にも当然力が入る。
会社の本気度が伺える発注書の枚数に苦笑いをしながら書類をめくっていると、気になるものを見つけ私は手を止めた。
「あれ……?」
普通こういった書類は日付ごとにまとめて、打ち込み作業をする際わかりやすくしてあるはずだ。私が目に留めた用紙の左上に書かれた日付と、前後の用紙に書かれた日付と大きく幅があって目を見開いた。
以前処理した後の発注書が紛れ込んでいたのかと思い、眉をひそめながらファイリングの金具を外して、それを指先でつまんで引っ張り出した。
通常、取引先から送られてきた発注書はこちらで確認後に会社名と所在地の入った押印をして製作所へファックスで送る。
その押印が書類のどこにも見当たらない。
「嘘」
思わず息を飲んで、口元を押さえた。
どこか手違いで別の書類と紛れ込んでしまったのだろう、未処理の発注書を前に私は思考を停止させてしまった。
どうしよう。これ、納期が今日だ……。