ハニートラップにご用心
「中にあるものは自由に使って。あのパソコン、ネットもできるしテレビも観られるから暇はしないと思うわ」
「ええ……?いいんですか?」
中に入って部屋の電気を付けてみると、本当にあまり使われていないのか家具に少しホコリが被っているようだった。
土田さんは少しだけ眉をひそめて、本棚のパソコンの隣に置かれたホコリを取るモップを指さした。
「ちょっとホコリっぽいわね。気になるなら、あれを使っていいから」
そう言いながら土田さんは換気のため、部屋の窓を開け放った。秋の夜風が思ったより寒くて小さく身震いをする。
寒かったのは土田さんも同じだったようで、ワイシャツの上から自分を抱きしめるようにして腕をさすっている。
「じゃあ、アタシは着替えてくるわね。困ったことがあったら、何でもアタシに頼ってちょうだい」
私の部屋にと割り当てた部屋から出る時、思い出したように土田さんは立ち止まって振り向いた。
その顔から一瞬表情が抜け落ちていて、何を考えているのか全く読めない底知れぬ恐怖を感じて私は肩を震わせた。
「アタシの部屋には、絶対入らないでね」
にっこりと笑って、それだけ言った土田さんは私に背中を向けた。もう恐らく相手からは見えてすらないけど、私はゆっくりと首を縦に振った。
しばらくしてから隣の方から扉の閉まる音が聞こえて、私はほっと息を吐いた。無意識に呼吸を止めていたらしい。
「……女の子の秘密ってこと?」
土田さんが女の子に分類していいのかどうかは微妙だけど。
私の独り言に答える声は無かった。