ハニートラップにご用心
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夕飯は土田さんが作り置きしていたという冷凍された鶏もも肉の団子に、大根おろしとチューブの梅ペースト、それから大葉を添えてさっぱりとしつつもなんとも食欲をそそる物を頂いた。
料理があまり得意ではない私は一人暮らしを始めてから外食かコンビニ、あるいは冷凍食品をレンジで温めて食べるだけの食生活だったため、大変感動したのだった。
炊きたてで温かくふわふわなご飯を少しずつ食べながら、そんな話をポロポロとした。丁寧に全ての話に相づちや返事をしてくれたあと、土田さんは呆れを含んだ半笑いで「そんなんだからお金がなくなるのよ」と痛いところを突いてきた。まるでお母さんみたいだ。
「お風呂沸いてるから、先に入っちゃって」
夕飯を終え、調理は完全に土田さんに任せてしまったためにせめても片付けはすると名乗り上げたのだけれど、前述の通り私はあまり家庭的な方ではない。慣れない皿洗いに苦戦している間に土田さんはお風呂を沸かしてくれていたらしい。
「え?そんな、家主より先に入るなんて……」
「もう、千春ちゃんはちょっとお堅いわねぇ?自分の家みたいに思っていいのよ」
いきなり転がり込むのを許可してくれただけでも有り難いというのに、わがままなんて言えないし好待遇をそんなに簡単に甘受出来ない。私からして見たら住む場所を失ったのは私のせいじゃないけれど、彼にとってはなんの関係もない話だから。
なんてことを言えば、彼は困った顔をしてしまうだろうことは容易に想像できた。素直に受け入れるか食い下がるか、悶々と悩んでいると土田さんが私の手元を覗き込んだ。
「あら、手洗いしてくれたの?食洗機使っても良かったのに」
そう言われて、泡だらけのスポンジと皿を掴む私の手と土田さんが指さす長方形の箱型の電子機器を見比べた。